けいこと日本人/ケータイを持ったサル/考えないヒト/よくわかる!ソ

No.33 「けいこと日本人」 中森晶三(1999年1月 玉川大学出版部)

中森晶三氏は、能楽師の中森貫太氏の実父。貫太氏の子供も能楽師なので、
三代で能楽師ということになる。

内容は、能を教育という視点から見たもので、
基礎基本の重要性や、教えを請う際の礼儀が重要だという内容。
日本の教育に対する考えとしては、
機会の平等を実現するのは良いことだが、結果の平等を志向するのは無意味であり、
たとえばと競争で順位付けをしないのはもってのほかだという。

基礎基本の重要性や機会の平等という考え方は、
教育にとって最も重要なことだと思う。

けいこと日本人

けいこと日本人

No.34 「ケータイを持ったサル」 正高信男(2003年9月 中公新書

著者は京都大学霊長類研究所教授で、専攻は比較行動学。
ケータイが普及した現在、日ごろサルに接している著書にとっては、
人間がサル化していると感じるポイントがいくつもあるという。
著者は、この現象に警鐘を鳴らすのではなく、もっとサル化した人間にあってみたいので、
長生きしたいといっている。

サルの特徴はいくつかあるが、
第一にまず、マザコンであることだ。
サルの群れは集団の外に出ることを極度に恐れ、
基本的には死ぬまで同じ集団内で過ごす。
ヒトのほうも、家族はお金的に見て子供中心主義であり、
渋谷にいる中高生に見られるようなどこでも地べたに座ったり、騒いだりしているのは、
一種の引きこもりであり、理由はどこでも仲間とくつろいでいて社会化できていないからである。

次に、コミュニケーションの目的は自身の存在証明であるということだ。
ケータイの普及によってメールでのコミュニケーション量は増大した。
だが、同時にコミュニケーションの質も変容し、サル化している。
従来ならば、コミュニケーションにはメッセージが含まれているのだが、
ケータイのメールでやり取りされるメッセージは「元気?」「どこいるの?」といった、
サルのコミュニケーション同様の自身の存在証明となっている。

そして、サルは相手に対して疑心暗鬼である点だ。
ゲーム理論で有名な「囚人のジレンマ」の実験をしたところ、
ケータイのヘビーユーザーは相手を信用しない傾向にあることがわかった。

以上のように、人間は退化しているということだ。

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

ケータイを持ったサル―「人間らしさ」の崩壊 (中公新書)

No.35 「考えないヒト」 正高信男(2005年7月 中公新書

「ケータイを持ったサル」と同じ著者。
前回よりもIT化に焦点をあてた内容となっており、日本の特徴という点にも焦点を当てている。
ケータイを中心とするIT化は確実にヒトをサル化しており、
IT化の中で、究極には、ヒトは「一匹」の存在になるかもしれない。

視覚に頼ったコミュニケーションは言語能力の衰退をまねく。
そしてそれはキレやすい人間をふやすという。

考えないヒト - ケータイ依存で退化した日本人 (中公新書 (1805))

考えないヒト - ケータイ依存で退化した日本人 (中公新書 (1805))

No.36 「よくわかる!ソーシャル・ネットワーキング」 山崎秀夫・山田政弘(2004年12月 ソフトバンクパブリッシング

ソーシャル・ネットワーキング・サイト(サービス)の歴史や効果などが判りやすく示されており、
大変有用な一冊だった。

SNSは2チャンネルなどの匿名掲示板とは違い、紹介によって入会ができ、
また、匿名での入会は禁じられているために、信頼性の高いコミュニケーションができる。
それは人脈作りにおいて特に効果を発揮する。

また、基本的なコンセプトの元となる理論としては、
六次の隔たり論」や「パレートの法則」、「弱い絆の強さ」などが存在する。

メインコンセプトである「六次の隔たり論(6 degrees of separation)」とは、
ハーバード大学の実験社会学者であるミルグラムによって発見された。
要は、知り合いの知り合いの知り合いの…という風に5人たどれば、
世界中の人にたどり着けるという理論である。
つまり、世界は以外に小さくまとまっているということ。

SNSの機能面から考えて、今後は個人の力や影響力が強くなり、
スターとなる個人の周りには多数の人間が囲っていくという社会になるという。

No.37 「ソーシャルネット・ワーキング・マーケティング」 山崎秀夫(2004年12月 ソフトバンクパブリッシング

筆者は前著において、SNSの可能性の最たるものとして人脈形成を説明していたが、
今回はマーケティングに関してもSNSは高い効果を発揮することを説く。
決して、前回の主張と矛盾するものではない。

というのも、人脈形成=コミュニティ形成と、マーケティングは密接にかかわっているためだという。
経験マーケティング理論によると、経済価値の高い順に、
経験、サービス、カスタム商品、コモディティ商品となっており、
SNSの特性を考慮すると、この中で最も価値の高い「経験」をつくることができる。
ブランドコミュニティは感情の共有を促進し、
知識コミュニティの一体感を支えることになる。